OWN(以下、O) 久々のインタビューですね。改めて宜しくお願いします。
Hirotton(以下、H) 落合君のインタビュー久しぶりですね。5年振りくらいかも。宜しくお願いします。
O では、最初に自己紹介をお願いします
H Hirottonです。絵描きです。
O PARADOXというのは?
H 自分が行うプロジェクトの名称って感じですね。ブランドでもなく、単に屋号的に使っている感じです。自分が描いた絵のプロジェクトに名前が必要で。
O アーティスト名がHirottonで、HirottonのプロジェクトがPARADOX。
H そうです。PARADOXは10年以上使っている名称ですね。もう12年くらいになるのかな。ロンドンに住んでいた頃に使い始めましたね。
O 最近はどんな活動をしていますか?
H 最近は個展をメインに活動していますね。個展は年に1回くらいのペースで大きい規模のものをできるように。
O ファッションブランド関係も引き続きやっていますよね?
H そうですね。知り合いのブランドや声を掛けてくれたブランドとか色々と。あとは事務所や飲食店の壁をやらせてもらったり。
O 壁画デザイン凄いですね!あ、OWNのディーラーで、仙台のショップRAFFISH DOGも壁に描いてありますね。
H はい。壁画にリーガルで描けるっていう機会って滅多にないことなので嬉しいですね。壁ってやっぱり不特定多数の人が目にするし。あと単純にデカいサイズで描けるのは描いていて楽しいです。
O なるほど。で、今回のOWNのインタビューは、今までとちょっと違う角度からインタビューさせてもらえたらと思っています。
H 分かりました。宜しくお願いします。
O 今回は、ファッション話を聞けたらと思います。"自分を形成するファッション"って感じで話が聞けたら。
H 分かりました。自分的にはやっぱり根底にパンクがあるので、パンクの要素があるファッションが好きですね。昔から変わってないです。
O 音楽自体が元々好きで?
H そうですね、10代の頃から。パンクとスケートボードが好きで。
O じゃあ好きな音楽とファッションがリンクしたという感じですかね?
H そうですね、自然な流れです。でも、パンクに関しては最初にファッションありきみたいなところもあったかも。鋲ジャンとか所謂パンクファッションに衝撃を受けて、プラス音楽もカッコ良い!みたいな。だからこそドハマりしたっていう。
O その当時食らったアーティストでいうと?
H 最初はUKが好きでしたね。中学生だったんで、見た目が分かりやすい方が食らいますよね(笑)。
O 分かります(笑)。鋲ジャン姿のメンバーのルックスが格好良いから音楽の方も聴いてみたくなったり。
H そうそう。最初は姉ちゃんの影響でSEX PISTOLS関連の映画とかだったんですけど、自分がハマったのはベタにDischargeとかChaos UKとか。レンタルビデオで映像も同時に観ちゃったので相当衝撃的でしたよ。
O 映像っていうとやっぱアレですか?
同時に 「UK/DK」!
O ですよねー(笑)。「No Security」最高(笑)。
H (笑)。あの衝撃が強かったからこそロンドンに住んじゃったっていうのもあると思います。
O ああいった音とルックスを同時に体感したっていうのが相当デカかったと。
H はい。興味が一気に出て、自分でもそういうパンクの格好をしてみたくなったんですよ。
O なるほど。じゃあこの流れでアイテム紹介をしてもらえたらと。
H 分かりました。じゃあ最初はTシャツとかから。まずはRAMONESのTシャツ。いきなり全然UKではないんですが(笑)。
O これはいつ買ったものですか?
H 中学生ですね。パンクが好きになってすぐ位の頃。静岡から原宿か渋谷に行って買いました。多分666かな。RAMONESは曲も好きだし、ロゴがアイコニックだしお気に入りでずっと着てましたね。
O これは相当着倒してますねえ。
H 破れた部分も縫ってるし、プリントの状態も凄まじいことに(笑)。
O プリントが陥没してる(笑)。でも"直して着る"ってパンクファッションの根底にありますよね。
H そうですよね。パンクが好きだと自然とそういう考えになるというか。直すことを含めてパンクのカルチャーっていうか。
O 今のファストファッションの流れと全く逆で面白いですよね。
H 気に入って買ったモノはずっと使っていたいし、自分は汚れとか穴とかもあんまり気にならないタイプで。逆に愛着が湧きますね。だから使い倒してダメージが出たなら、直してまた着る。これもずっと変わらずやっていることです。
O パンクの話が良い話になってきた(笑)。
H (笑)。次はTHRASHERのTシャツですね。さっき、UKパンクが好きって話をしたんですが、自分の中でパンクとスケートボードが繋がって、USカルチャーも好きになってきた時期に買った1枚ですかね。
O これはいつ頃買ったものですか?
H これは高1くらい。確かその当時は年に2回東京に買い物行ってたんですよ。緊張しながら(笑)。パンクショップで革ジャンとか欲しかったんですが、お金も持ってないから全然買えなくて。スケートショップだとTシャツは買えるから、その時に買いました。
O 腰周りに穴が多いですね。これは鋲ベルトで?
H そうです。鋲ベルトしてスケートするんで小さい穴が開きまくりで。これは当時大きめに着てたんで、最近でも全然着ますね。リブとかは限界を迎えてます(笑)。
O ボディのブラックも褪色してグレーっぽくなってますね。で、次がオリジナルTシャツですか?
H これは自分の描いた絵で初めて作ったTシャツなんですよ。ロンドンにシルクスクリーンの施設があって、そこで刷って作りました。
O 動物と植物モチーフで、今の作風に繋がっていますね。
H 確かに。今こうして改めて見ると、細かい部分の描き方とか全然甘いんですが、自分の原点的なアイテムと言うか。
O 最初から"自分の絵をTシャツにする"っていう動きも今に繋がっている気が。
H それは凄く意識してました。やっぱりバンドのマーチャンダイズに対する憧れがあったんですよ。だから自分も絵を描いたら絶対Tシャツにしようと思ってましたね。
O 最初からそのスタンスだったんですね。
H そうなんです。初めて自分で作ったTシャツなんで、完成した時はめっちゃ興奮しましたね。この時に"PARADOX"ってワードを使い始めたんです。
O なるほど。原点ですね。では、次がライダースジャケット。鋲ジャンですね。
H これはCRAFSORTって言う友達がやっているブランドの革ジャンですね。ベースの革ジャンはカラー、着丈、内側のチェック柄とかも結構細かくオーダーしたオリジナル品です。作ってくれたトモノリって奴は付き合いも長いし、俺の好みも知ってくれているから、かなり理想的な革ジャンに仕上がってます。
O かなり重量もありますね。鋲は何発くらい打ってますか?
H 2000発くらいかな?布パッチも全部自分で刷ったモノを縫い付けてます。缶バッヂも自分で作ったものが多いかも。ブートも何個かありますね。
O FUGAZIとCRASSが1着の革ジャン上に並ぶっていうのも良いですね。他にもイラストが描かれていたり、鋲のサイズが違っていたり、こだわりが詰まってそうな。
H このイラストはHeroin Skateboardsのボスのフォズに描いてもらいました。鋲も場所によってサイズを変えたりしてますね。でも自分はそれほど細かくきっちり計算して鋲打ちをしたくはなかったので、千切れた鋲ベルトのピラミッド鋲を移植して打ったりして自分なりの"崩し"を入れてますね。鋲ジャンはこれが3代目なんですが、過去最高の仕上がりになったと思います。
O これ着てスケートするのはインパクトありますね。では次はベストの紹介を。
H これは1番着てるベスト。ベースはLeeのモノですがリペアもしまくってるし、原型はもはやボタンくらい。どんどんボロボロになっているんですが愛着のある1着ですね。
O 襟も違う生地になってますね。ボディの色も独特だし。
H 1回黒色に染めたんですよ。その後にラー油をこぼしちゃってめちゃくちゃ臭くなったんで、洗濯したんです。そしたらこの色に(笑)。
O インディゴと黒染とラー油で化学反応が(笑)。
H そうなんです(笑)。これはちょうど東京に来た頃から着ているので思い出深い1着ですね。
O 次は、ブラウンのダック生地のベストを。
H ボディは確か古着屋で買ったカーハートです。アメリカに良く行っていた頃に買いました。アメリカのスケーターで、バイク乗りの連中はこういうベストを良く着ているので影響されました。裾部分にシューレースを括り付けてるのも彼らを真似てやっています。
O これは補強の意味があるんですかね?
H そうだと思いますよ。裾が擦れてボロくなりやすいんで、シューレースを通して括り付けて補強して。
O 次がクラストパンツ。"Hirottonと言えば"的な1本ですね。
H これ、元々は中学生の時に地元のジーンズショップで買ったものなんですよ。地元のCHIKUMAっていう洋服屋さんで。ボディは……「BLUE WAY」って書いてあります。あんまり良く知らないメーカーです(笑)。
O このデニムは最初からクラストパンツにするつもりで穿いていたんですか?
H いや、全然そんなことなくて。最初は単にGパンが欲しくて買って、穿いている途中にパンクが好きになった感じです。気に入っていたので、スケートする時も穿くじゃないですか。そうするとどうしても穴が開いたり破れたりするんで、それを毎回自分でチクチク直していったら……自然とクラストパンツになってたんです。
O じゃあ最初はダメージを受けやすい膝とかケツ周りだけを直していたのが、こうなったんですね。
H そう。だからケツ周りは何回も直しすぎて、一回りサイズが大きくなっちゃって。なので1回解体して詰めてサイズを直しましたね。あと、Tシャツくんのインクを染み込ませて強化させた生地をパッチ代わりに使ってたり。黒い部分がそうです。タイのモン族の生地とかも使っていますね。かなり思い出が詰まっているから、一生捨てないと思います。元々15歳くらいから穿いてるから、いつからクラストパンツになったのか自分でも分からない(笑)。で、もう1本のクラストパンツはDickiesなんです。
O これ、Dickiesだったんですね。
H はい。ダブルニーの"Slim Straight"っていう型なんですけど、周りの友達も結構穿いていて。OLEDICKFOGGYの伊藤さんのクラストパンツも多分これだったと思います。自分の周りでは流行りましたよ。狭い界隈ですけど(笑)。
O DickiesがクラストパンツになるっていうところがHirottonさんぽいですね。スケーターマインドというか。あとペンキも結構飛んでる。
H 確かにそうかもですね。ペンキに関しては、これはもう職業柄というか。自分は壁描く時とかも、普段のスケートする時と同じ格好でやるんです。描く時用の服とかはなくて。だから汚れもそのまま。「描けるよ」って言われた時に洋服の汚れを気にして描けないとか1番ダサいじゃないですか。あとこれを穿いていた頃はミシンを持っていたので、ミシンを使って縫っているなあ。こうやって改めて見ると色々思い出しますね(笑)。
O リペアして長く使うと思い出がたくさん残りそですね。ここからが小物関連で、まずは2連ピラミッドの鋲ベルト。
H これはTOCCATAのモノです。鋲の先端が尖っているのが特徴で。日本だと尖っている鋲のベルトって意外と少ないんですよね。でもスケートする時も身に付けるんで、尖っていた先端も結局は潰れてるんですけど。昔は3連の鋲ベルトもよく使っていたんですが、ベルトループに通らないっていうこともあって2連ピラミッドタイプが好きですね。ベルトを身に付ける時はこれのみです。ベルトはこの1本しか持ってません。
O おおー。かなりの愛用品ですね。
H 気に入ったモノをずっと使いたいので、様々な種類を持っているタイプではないですね。気に入ったモノを使っていって、汚れたり破れたりしたら直して、っていうのは自分の中で基本的な事なので。
O 次がケツ当てですね。これって正式名称なんでしたっけ?
H 確かバムフラップかな?これはTV SHOWっていう大阪ローカルスケーターのブランド。
O これもリペアしているんですか?
H いや、これは元からこういうデザインで。チェック柄の使い方とかもいちいち最高。当時、三角公園周りのスケーターでこのブランドの布で作られたウォレットチェーンをみんな付けていました。自分のは千切れてどこかに行ってしまいましたが。
O 次はDr.Martensですかね。定番のブーツではなく、3ホールタイプ。
H 俺は何となく3ホールが好きですね。普段はスケートするんでスニーカーなんですが、このDr.Martensは雨の日に履くことが多いです。
O 2足ともかなり使ってますね。ペンキも付着しているし。
H そうですね。チェリーレッドの方は色々と付着し過ぎて元の色が分からないですね。Dr.Martensもパンクファッションの定番アイテムだし、UKらしさを凄く感じることができるアイテムですよね。カルチャーが詰まっているな、っていう。2足ともかなり履いてきたから、革がめっちゃ柔らかくなっています。
O では最後がアクセサリー類ですね。
H OWNのサングラスはめっちゃ使ってます。俺は#03のブルー。
O 気に入ったポイントはどの辺?
H 色も最高ですね。派手じゃないブルーってアイウェアでは滅多にないじゃないですか。あと形も凄く良い。俺、目と眉毛の距離があるのか、あんまりしっくりくるサングラスがなくて。でもこの#03はバッチリでしたね。フィット感も完璧だし。
O ありがとうございます!嬉しい!ではリングの方もお願いします。
H 右がHeroin Skateboardsのリングです。Heroinの20周年記念で販売されたんですけど、通常販売されたモノはゴールドで、このシルバーバージョンは関係者とかクルーだけに配られたモノ。そういう心遣いってめっちゃ嬉しいですよね。で、真ん中が結婚指輪。自分でデザインして、ヒロちゃんっていう友達に作ってもらいました。ゴールドにドクロと薔薇を彫って、自分の方には黒い墨を流し込んでもらっています。左のリングはGoogoolimagっていうブランドのモノです。デザイナーがイランルーツなので、イランのデザインを取り入れて作られています。
O 身に付けるモノに対して、Hirottonさん的に明確なルールとかって設けてますか?
H 何だろうな。自分が本当に好きになったモノを身に付けるっていうことですかね。そもそもあんまり流行りとかも気にしていないので。あとは繋がり。友達とか知り合いが作っているモノ。全く知らない人のが作ったTシャツや、デザインだけで洋服を買うとかは全くないです。
O 分かります。抵抗ありますね。でも逆にデザインのみで洋服などファッションを楽しむ人もたくさんいますよね。
H そういう人たちに対して全く否定はないです。でも自分は"パンクが好き"っていう感情が根底にあるので。ファッションは自分の内面を表すと思っているし。
O 何かめっちゃ良い話でまとまった気がする(笑)。ありがとうございました! 最後にインフォメーションなどありましたら。
H OWNとのプロジェクトもありますね!あとはOWNとも繋がりが深い大柴裕介君を含めたコラボ展も、来年前半に大阪と東京で予定しています。
【INFO】
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Photo by Chabo