OWN(以下、O) まず、マーシーさんの自己紹介をお願いします。
LIL MERCY(以下、L) LIL MERCYかMERCYっていう名義で時に本名で、WDsoundsというレーベルを運営しています。音楽活動としては、PAYBACK BOYSというハードコアバンドでヴォーカルをやっていて、J.COLUMBUSという名前ではラップをやっています。COTTON DOPEという名前の時は文章を書いたり音楽をセレクトしています。RIVERSIDE READING CLUBの初期メンバーとして記事やイベントもやっていますね。こうやって改めて並べると本当に色々やっていますね。音楽を作るのも自分の本業だし、音楽の制作に携わるのも本業だと思っています。文章を書くことも。
O 昔からマーシーさんは活動の幅が広いですよね。その中でも一番の軸はやはりレーベル業ですか?
L やっぱりそうかもしれないですね。毎日やっている仕事となるとWDsoundsのことだし、一番時間も割いているし。レーベルの業務を1秒もやっていない日はほぼないです。
O WDsoundsのスタートは何年ですか?
L 確か2004年だったと思うんですよね。
O 立ち上げたキッカケを教えて下さい。
L OUT TA BOMBっていうハードコアのレーベル業、ディストリビュート業、通販などをやっているところで昔働いたんですよ。レーベル業務の部署にたんですが、自分がリリースしたいと思ったものが出せなかったこともあった時に、色々と縮小するような動きがあって、だったら自分でやろうと思ったのがキッカケですね。 OUT TA BOMBに入った時はとにかくレビューが書きたいと思って入ったんですよね。その時レーベルとしてリリースに関わらせてもらったものは自分のバンドのWIZ OWN BLISSもですし、DSL、ENDEZWECK、DISTRICT 9、AGENTS OF MAN、ELEMENTS 4 UPWARD、NEW FOUND HOPEコンピレーション等で、今思い返すとかなりやらせてもらってますね。DSLの時は板垣恵介のところに飛び込みで連絡して頼み込んで絵を描き下ろしてもらったし、AGNETS OF MANは2004年に日本ツアーやらせてもらいましたね。BIOHAZARD来日中止になった時のMITCHからの電話忘れられないですね。その後、みんなで大阪でびっくりドンキー食べたな(笑)。板垣恵介に見せられた50年ポスターももしかしたら一人でやろうと思ったきっかけなのかもって今思いました。
O あくまで一般論としてですが、仕事ってやはりどこか会社組織に属して、というイメージがあると思うんです。そこから外れてでも一人でレーベルをやるという道をチョイスしたということですよね。
L 一般論として、やっぱり仕事は組織だったり大人数でチームプレイでやれば大きなことができると思います。だけど俺は多分人と一緒に仕事するのがあんまり上手くないな、って自分で思うんですよね。同じ組織内の人同士で何かをやるというのが苦手で。自分一人で成り立っている状態があったうえで、誰かとリンクして何かを制作するということは凄く好きなんですけど。簡単に言えばフリーランス同士の人間が集まって何かをやる、的なイメージが好きですね。あと会社という組織の中にいると、言ってはいけない余計なことを言ってしまったり(笑)。 やりたくない時には極端にやる気がなくなる(笑)。
O 僕がマーシーさんに出会った年齢が若かったということもあるとは思うんですが、その頃から常にインディペンデントで確立している存在だな、という印象がありました。
L 相変わらずフラフラしていますけどね(笑)。でも、やっぱりハードコアが好きで、”ハードコア=インディペンデント”的なイメージもあったし。自分が最初に表現として選んだのがバンドではなくてZINEで、あくまで自分という存在を確立させた上でハードコアシーンと関わりたいな、という気持ちもありましたね。”自分なりにシーンに関わる”という感じ。ライブに行ってモッシュして暴れるのも個々の動きだと思ってます。腕振り回すやつ、キックボクシングみたいに暴れるやつ、タックルするやつ、いきなりマイク奪って叫ぶやつ、それも個人の動きなのかなって(笑)。
O (笑)。インディレーベルとしてスタートして、WDsoundsも今年で18年ですね。
L 最初の方はマイペースでしたけどね。ハードコアバンドのリリースや海外のINTEGRITYの音源をリリースして。2ツアーをやったら速攻で200万円くらいお金も無くなってしまって、またバイトに戻るみたいな。そんな感じでしたね。
O レーベルをスタートさせた当初は、イケる!みたいな確証はありましたか?
L うーん、どうなんですかね。でも、自分たちのやっていることが一番格好良いでしょ!という根拠のない自信はいつもありましたね。今でもそうなんですが、自分が興味がある現場に遊びに行いく中で仲良くなった人たちと何かを始めて、みたいなことが多いですね。始めた頃はWDsoundsなんてほぼ無名に等しかったと思うし。 レコード屋に音源持って行って、あしらわれてちくしょうっていつも思ってました。
O どれくらいの時期からWDsoundsの認知が広がってきたとご自身で思いましたか?
L DREADEYEの7インチを出して、PAYBACK BOYS、LOW VISONのリリースが続いた頃ですかね。D.O.D、ELMOのリリースもありましたし。DMBコンピレーションもあって、あの時期辺りから急激に知られるようになったな、とは感じていますね。街を歩いていたらWDロゴの洋服着ている人を見掛けてビックリしたり(笑)。 でも、よく考えたらその時くらいまでWDsoundsの洋服は作ってないですね。この頃、池尻に住んでて、中目のプリント屋に話聞きにいったら25 TA LIFEのTシャツ着た人が働いていて、ここで作ろうって思ったんだった。
O では、WDsoundsから”メインストリーム”という存在はどのように見ていますか?
L メインストリームってTVとかメディアでよく流れているからそれに触れるというような感じだとしたら、それぞれのメインストリームがあると思うんですよね。毎日レコード屋に行って中古レコードを探している人にはそれが自分が音楽に一番触れている場所だと思うんですよね。自分は最近、犬中心の生活なんですけど、それが自分にとってのメインストリーム。そこを中心に色んな事柄に触れていく。人それぞれだし、自分たちはいつもここにいるし、所謂メインストリームってことに対して意識はあまりしないですね。でも否定的な意味ではなくて、配信やストリーミングとかそういう流れに関してはメインストリームの手法を上手く取り入れたりはするようにしています。
O WDsoundsはマーシーさん一人で運営していますが、リリース量は多いですよね。
L これは世に出すべきだな、という直感は大切にしていますね。あと、自分の力を貸すことで、より良い方向にいくな、と思うことに関しては動くようにしています。
O ちなみにマーシーさん自身が思う”自分の力”ってどんなことですか?
L 伝わるべき人に伝えることを考えてサポートすることですね。アーティストとして音楽を制作するだけではなくて、レーベルの仕事を続けてきた分、自分にしかできないことがあるというか。流通に関してや、プロモーションに関してなど仕事的な話になってしまいますけどね。あと、自分のコネクションには音楽の繋がりだけではないものもあるので、それが活かせれられたら良いかな、と。
O なるほど。では、WDsoundsとしてもマーチャンダイズを豊富にリリースしていますし、マーシーさんは個人的にも洋服というかファッションは好きですよね?
L はい、好きですね。打ち合わせに行く場所や会う人によってファッションを変えたりすることって楽しいですよね。例えばライブハウスに行くからあのTシャツを着ようか、とか。デートに行くから普段より小綺麗にしようとか。新しいものを着るのも嬉しいし。自分の生活とは切り離せないものっていう感じですかね。それは眼鏡に関しても同じ感覚だと思いますね。
O マーシーさんは眼鏡も複数所有していますよね?
L そうですね。昔は眼鏡を視力が弱くなって使う道具として捉えていたんですけど、30歳くらいから自分が格好良いと思える眼鏡を持つって凄く洒落ていることだな、と思い始めて。圧倒的に顔の印象も変わるし。2PACも拘置所から出てきた時に眼鏡だったりしますよね。それに影響受けて御徒町でラルフローレンのフレームレスを買いに行きましたね。
O では、OWNに関してなんですが、OWNのスタートはどう感じましたか?
L 前に落合君に「目が焼けるからサングラスを掛けた方が良いですよ」って言われたのが凄く印象に残っていて。ファッションとしだけでなく、眼鏡やサングラスのことを好きなんだな、と思ったんですよ。だからOWNがスタートすることは純粋に楽しみでしたね。自分の周りで洋服のブランドをやっている人は多いけど、眼鏡という一つのカテゴリーでブランドをやっている人はいないし、職人的な動きが面白いなと。
O マーシーさんは今OWN #03のフレームに度を入れて使ってくれていますね。実際に使ってみてどうですか?
L この眼鏡に変えてから痩せた?って言われることが増えて嬉しいです(笑)。普段から眼鏡として使っているんですが、かなりお気に入りですね。ゴツっとしているんだけどフィット感も良いです。
O ちなみに#03をチョイスした理由は?
L スタンダードな形ではないとは思うんです。でも個人的にOWNのイメージは#03だったんですよね。あと、モノとして単体で見るとユニークなんだけど、掛けるとしっくりくる、みたいなのが好きで。眼鏡ってそういう側面があって面白いですよね。父親や祖父が使っていた眼鏡も昔のものだから結構ゴツいんですけど、掛けると馴染んでいたなあ、とか思い出したり。
O では、マーシーさんの今後の動きを教えて下さい!
L MASS-HOLEがやっているDIRTRAINは、WDsoundsと一緒にシリーズ化してやっていく予定ですね。全曲MASS-HOLEビートで自分のソロアルバムも制作中です。あと、最初の自己紹介で入れ忘れてしまったんですが、MEJIRO ST. BOYZとしてもアルバムを作っていて、結構色々な人のビートを使っていて面白い仕上がりになると思います。isleaの2ndアルバムが5年ぶりくらいに出るので、文章を書かせてもらっています。メジャーから出る作品にも携わらせてもらっているし、特定の場所でしか手に入れられないものも作ってます。MULBEのリリースに関しても手伝わせてもらって、刺激受けていますし、いつも通りではあるんですけど、より広がりのある動きをして行けたらな、と思っています。 名前出さずにプロジェクトを動かしてるものもあったりしますね。
O PAYBACK BOYSとしての動きはありますか?
L あります! BLACK HOLEから3曲入りの7インチのリリースも進行しています。PAYBACK BOYSは最高ですね。
【着用アイテム】
#03 BLACK/CLEAR
価格 ¥18,700 (税込)
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