OWN INTERVIEW CONTENTS Vol.26 坂本一(instantbootleg director)

OWN INTERVIEW CONTENTS Vol.26 坂本一(instantbootleg director)

OWN(以下、O) では、まず最初にハジメさんの自己紹介からお願いできればと!

坂本一(以下、S) おっ、ちゃんと質問考えてきたんだ!

O そりゃあインタビューなんだから当たり前でしょ!何やると思ったんですか。

S 即興でフリートークとか。

O (無視して)じゃあプロフィールからお願いしますね。

S (笑)。instantbootlegというウェブショップを運営しています。所謂ウェブのセレクトショップですね。

O セレクトは古着がメインですよね。セレクトの基準などは設けていますか?

S 所謂ヴィンテージの古着っていうよりも、古着をツールとして、カルチャー的な側面をどう伝えられるかどうか、っていうことがざっくりとした基準かなあ。自分自身も今まで洋服の仕事を色々やってきた中で、そのカルチャー的な側面こそ大事なんだな、と感じていて。洋服そのものっていうよりも、その洋服の周辺の事というかさ。むしろそこがないとダメなんじゃないかな。

O なるほど。instantbootlegにその感覚は凄く反映されている気がします。

S 例えば、古着のRALPH LAURENのシャツを1枚売るにしても、アメリカのHIP HOP畑でRALPH LAURENがどうして愛されているのか?とか理由とかをしっかり説明してあげる。それをしっかり説明した上で、じゃあ日本ではこう着てみたら?っていうような提案をするように心掛けているかな。古着の持つそういった側面にしっかりフォーカスするという感じ。

O 古着って1点モノじゃないですか?その1点に対しての熱量というか、打ち出しの強さがinstantbootlegの面白さですよね。

S その1点モノの古着に対して、結構な量のテキストを書くからさ。ビジネス的に考えるとマジで無駄なんだよね。超非効率。だけど、それだけ伝えたいことがあるんだよ。そんな俺のテキストを読んで、ウチで手に入れてくれた古着が色々な事への導入になったら面白いし、嬉しいな、とは思ってる。例えば音楽ネタで書いた洋服だったら、それに関わるCDとかレコードを聴いてみようかな、っていう流れになるのは凄く素晴らしいよね。ウチで得た知識を元に、他のお店でまた違った洋服に出会ってくれたりしても嬉しいし。あと、自分的に古着って"死体"と同じだと思っていてさ。何故死体かと言うと、そこには情報がたくさん詰まっているから。どういう風に使われてきてここに辿り着いたのか?とか推理的に想像するのも楽しい。例えばTHE NORTH FACEって何でニューヨークのイメージがあるかと言うと、ルーツはグラフィティライターがスプレー缶を万引きしたり、警察からモノを隠すためにTHE NORTH FACEのxxxx(マウンテンライトJKT)のポケットがデカくてちょうど良かったからなんだよね。そうやって着られだしたモノがどんどん街に広がっていったワケ。そのアイテムの品質表示やネームタグで年代を判別して、そして当時の着用画像を見つけたらその情報という点が線になってストーリーになるんだよね。推理や推測が確証に変わってくの。そういうのが俺がしてきた楽しみ方で、instantbootlegのお客さんにも伝えていきたいかな。

O "語れる"要素というか。

S うん、それこそが大切なんだと思う。今の時代って色々な情報がたくさん溢れ過ぎていてどんなお店を選んで良いのか分からない、って人が実は多いんじゃないかな。2nd STREETみたいなお店もめちゃくちゃ増えて、これだけ古着というモノが一般化してきた中で、自分がやれる他にはない事って何なんだろう?って考えた時に、その"語る"っていう部分が大切なポイントだな、って。何故この古着が格好良いのか、っていう理由付けに力を入れてみようと思ったんだよね。自分が昔、渋谷とか原宿の洋服屋に通い出した頃、お店の人や先輩方に色々と教えてもらった。時にはかなりウゼェ説教も受けながらさ(笑)。でもそういう風に教えてもらったことが今の自分を形成してくれたとも思っているし。だから、そういう自分が体感してきた凄くアナログなことを、デジタル上のコンテンツとしてやってみよう!っていう経緯で始めたのがinstantbootlegなんだ。

O そういう打ち出しや表現でいこうと決めた理由やキッカケは何かあったんですか?

S コロナ緊急事態宣言の時に俺は会社に勤めていたんんだけど、雇用に関して色々あって。そんな時に、俺が思ったのは、これからの時代は隣の家に醤油を借りて、その醤油を使って芋煮を作って、沢山作ったのでもらって下さい、って渡し行く。そんな時代になっていくんだろうな、と思ったの。

O ちょっと分かりにくいんですが(笑)。お裾分け的なことですか?

S いや(笑)。何て言うのかな?今の時代、どのシーンでもこれだけ枝分かれして細分化されちゃって、色んな奴がいて、広がり過ぎているように感じるんだよね。15年位前だったら世に出ていなかったようなレベルの人でも表に出ちゃっているよね。世に出やすい時代になったっていうこと自体は良い面もあると思う。今はiPhoneが1つあれば何でもできるしね。でも、その敷居が低くなったという事の良くない面を当時凄く感じたんだ。もう色んな奴が好き勝手に発信しまくっていて、情報が錯綜しているイメージ。何が正しいのかとか、物事のルーツとかも情報が多くて辿り着けない。今俺がもし20代だったとしたら、何を選べば良いのか全然分からないんんだろうな、と思う。

O 敷居が低くなった事の弊害は確かにありますよね。

S そうそう。敷居が高かったからこそ、格好良く言っちゃうとそこに本物があったワケ。色々と遠回りしながらもそこに辿り着くと、より職人的なモノとか世界観を味わえたんだよね。それでさっきの芋煮の話に戻るんだけど、だから俺はこれからの時代、何かの縁で繋がれた奴らと発信していく、みたいなノリこそが大切になるんじゃないのかな、って思ってさ。しっかり信頼できる奴とか、基本的なことで言っちゃえば金持って逃げない奴とかね(笑)。これからは、また昭和みたいにそういう人間的な部分をより大切にしていく流れになっていくんだな、と思っているんだよ。青臭い話になっちゃうけど、大企業みたいなコスパ・タイパ重視のやり方より、もっと人間臭く泥臭くやっていく。面白いと思える人や、人間性が素晴らしい人たちと繋がって何かをやっていく、みたいな。気が合うやつとウダウダ話して決めたりとか、そういう事こそが最高なんじゃないかな。

O なるほど、現代へのカウンター的な。そのツールがハジメさんにとっては古着ということですね。

S そうだね。コミュニケーションツールとして古着があったから繋がれた人と商売や仕事ができて、それを広げていけたら理想的かな。

O では、instantbootlegにおいて、商品セレクトのこだわりを教えて欲しいです。

S セレクトに関しては、実はこだわりがハッキリとあるんだよね。俺は一般的に人気があるモノに対して、意外としっかりアンテナを張ってチェックしていて。その上で、自分がやるかどうかを物凄く精査してる。セレクトショップって、"やること"より、"やらないこと"の方が重要だと思っているんだよね。その"やらないこと"をどれだけ俺流にスマートに説明できるか、っていう。流行ってるモノでも自分が凄く良いな、と思えるのであればどんどんやろうと思っている。だけど「このスタイルで一生行くぜ」みたいな変なこだわりは全くない。感覚的な話になっちゃうけど、そこがセレクトのこだわりになるのかな。

O トレンドだけを見たセレクトにはなってないですもんね。

S それはあるね。あと、どれだけ自然に気になるブランドや面白いことをやっている人たちと繋がれるか、っていうことも重要視しいて。だから、メールとかDMでアポを取って会いましょう、とか絶対にしない。

O そうなんですね。繋がり方、出会い方もアナログな方法を。

S そう。自然な流れで繋がれた人の方が、ビジネスになってからも腹を割って話やすいし。あと、古着のセレクトに関してのこだわりとして、"自分が着れるモノ"っていうラインは絶対重要。どんなにトレンドで売れそうでもね、自分が着ないだろうと思うモノをチョイスしても上手くリコメンドできないし、どこかに嘘が出てきちゃうからそこは結構こだわってるポイントかな。

O なるほど。ちなみにハジメさんの中で着れる/着れないの線引きってどこになるんですか?

S 語りたいと思えるモノかどうかっていう部分だね。それを線引きにすると、その打ち出しには嘘がない状態になると思うんだ。これをこういう風に着ますよ、とか、こういう理由で買い付けましたよ、とかをテキストで書ける。売れそうだからセレクトしました、っていうだけだと、面白い紹介の仕方や、テキストでしっかり語る、みたいなことはできなくなっちゃう。個人的な意見だけど、古着屋さんっていうのは職人であるべきだと思っていて。コレのココが良いよ、とかしっかりとレコメンドできる存在でありたいし、その人なりの趣味嗜好が反映されるべきだと思ってるかな。

O instantbootlegは商品の紹介が本当に誠実ですよね。

S それは本当に意識しているところ。だから俺は自分のやっているビジネスの中でinstantbootlegを主軸にしてないんだよね。主軸にしてしまうと、さっき話したみたいに売るためにセレクトしたラインナップになってしまうだろうし。そうなった瞬間にウチの個性は消えるだろうし、自分ならではの打ち出しもできなくなると思う。あと、さっき落合が言ってくれている通り、ウチは1点モノの古着に対してしっかり語っている。語れる事があるモノをセレクトして、それに対して自分がしっかり語る、という部分こそがinstantbootlegの強みだと思っているから。最近はただモノを売っているだけ、っていうお店が増え過ぎているから良くないな、と感じるよね。古着ブームだからサイズだけ書いて出しておけば売れるかもしれない。だけどそれは不誠実だと思う。例えば今HIP HOPブームだけど、10年後にどれくらいの数のアーティストが残るのか?って言ったら、しっかりやることやっているアーティストだけしか残っていないと思う。多分、俺たちが2000年代に経験したHIP HOPブームと時と同じ感じになると思うよ。メジャーレーベルと契約して流行りに乗っていただけの奴らは流行りに食わせてもらっているだけ。だからこそ自分は誠実に、着実にやっているかな。

O では、ハジメさんにとっての古着の魅力を教えて欲しいです!

S まず、古着っていうのは誰とも被らない1点モノだっていうこと。そして、古着っていうものはただの中古品ではないよ、ということかな。HIP HOPとラップの違いと言うか。HIP HOPはカルチャーの名前で、ラップは歌唱法でしょ。アイドルもめっちゃ上手にラップしてるけど、それが必ずしもHIP HOPになるとは限らないよね。それと同じで、古着はただの中古品ではなくてカルチャー。そんなカルチャー的アイテムを誰とも被らずにゲットできるっていうのは、めちゃくちゃ魅力的な事だとずっと思っているかな。あともう1つは単純に安価で買えるということ。古着もユースカルチャーの一部であると思うから、プライスに関しても凄く魅力だと思うよ。

O その2つの魅力ははinstantbootlegにもバッチリ反映されていますね。

S うん。希少価値が高いモノはどうしても値段が高くなってしまうけど、安く出せるモノはなるべく安くなるようにしているかな。所謂ヴィンテージではなく、"一般古着"っていうラインもしっかり充実させているから、ウェブは随時チェックして欲しい。

O 過去のカルチャーからのセレクトが多いと思いますが、その中でやる/やらないの線引きはありますか?

S シンプルに自分が格好良いと思っていたかどうか。例えばきゃりーぱみゅぱみゅが流行った時に、アルファベットで"HARAJUKU"っていうのがあったでしょ。あれもあと10年もすれば、カルチャーとして古着の打ち出しができちゃうワケ。男女差のないジェンダーレスなカルチャーの始まりで、カラフルな配色で、みたいな打ち出しをする人も出てくるんじゃないかな。でも俺はやらない。それは自分が当時格好良い、真似したい!と思わなかったから。その絶妙な線引きがセレクトの個性にも繋がってくるのかな。90sモノでも、Tommy Hilfigerはやらないけど、NAUTICAはやる、みたいな(笑)。

O めっちゃ絶妙(笑)。でも何となく分かりますね。

S 分かるっしょ(笑)。そういうカルチャー的なこととか、ROCKとかHIP HOPとか、ある種の共通言語みたいなモノがあれば、この感覚は分かってくれると思う。素養がないとキャッチできない面もあるとは思うんだけど、そういう面も伝わるように打ち出していきたいな、と思っているかな。


O では、ここからはOWNのお話をさせて頂ければと思います。昨年は夏に一緒にPOP UPをやりましたね。最初にOWNを知ってくれたキッカケなど教えてもらえますか?

S 最初は元Warp編集長の市川に教えてもらった感じだね。個人的な意見なんだけど、眼鏡ブランドって結構どこも工業的なイメージがあったのよ。プロダクトにフォーカスを当て打ち出す、みたいな。それに比べて洋服は素材的にも有機的な感じがするんだけど、OWNは洋服のブランドに近い感覚で打ち出しているなあ、っていう印象を受けたんだよね。

O どういう部分からそういった印象を持ってくれたんですかね?

S OWNは毎シーズンしっかりルックを制作しているし、撮影もロケだし、撮影場所にもこだわりが感じられた。サボらずやることやっているんだな、っていうか。あとはインスタの打ち出し方だよね。インスタでのアウトプットのやり方が面白いなあ、って。ポストは綺麗な感じでやっているのに、ストーリーは個人アカウントみたいで格好付けてない感じ(笑)。

O ありがとうございます(笑)。

S OWNのこのインタビューコンテンツも、俺なんかのインタビューやってるし(笑)。まあ俺も眼鏡が好きだし、インスタを見ていて、モノ自体も気になっていたんだけど、他の眼鏡ブランドがやらないこういう打ち出しとか、載せている音楽ネタとかも含めシンパシーを感じたんんだよね。

O 古着メインのinstantbootlegの中で、OWNはどんな感じで楽しんでもらえたら良いですかね?

S 眼鏡、サングラスって、気取れるよね。それは単純に気分が良い事だし、シンプルに楽しい。自分の印象もガラっと変えられるし、"アイウェア"とは良く言ったものでさ、"目に着る洋服"っていう感じを楽しんでもらえたら良いな、と思っているね。とこでどんなデザインの眼鏡、サングラスを掛けようかな、みたいな楽しみ方をして欲しい。ぶっちゃけ、どんな服装の人がどんな眼鏡、サングラスを掛けても、自信満々に掛けてたら絵になるから(笑)。あと、メンズファッションにおいての超スタンダードな格好良さを目指すなら、白の無地Tee、Gパンの次は帽子じゃなくてアイウェアだと俺は思うのよ。

O そう言われると、かなりファッション的に重要なアイテムですよね。

S 大柴(裕介)さんとかまさにそうでしょ。スケーターだからディッキーズでバンドTeeっていうシンプルなファッションが多いよね。そこにOWNのアイウェアを掛けているからより格好良くてお洒落に映るというかさ。だからこそ、眼鏡とかサングラスのセレクトって、ショップにおいて重要だと思うんだよね。OWNはinstantbootlegのセレクトにもしっかり馴染んでくれていると思うよ。

O なるほど、ありがとうございます!では、今後のinstantbootlegでインフォメーションなどありますか?

S 夏にニューアルバムが出ます!

O はいはい(笑)。

S (笑)。今後のセレクト的にはシャツを増やしていこうかな、と。最近は高いシャツを売ってるところが多いけど、そこまで高くなく、良い塩梅のモノをセレクトできたらと考えているかな。夏に向けて半袖シャツとか良いかもね!あと、某有名アウトドアブランドの"日本の100人"的な企画に選んで頂いたので、その企画に関することも今後インフォできると思います。引き続きチェック宜しくお願いします!

【INFO】

instantbootleg

https://instant-bootleg.com/

instagram @hajime0722

ブログに戻る